昨年日本では米が豊作であったにも関わらず、流通するはずの米は所在不明となり、自民党の昔からのやり方が物議を醸しています。
小泉農水大臣は、自民党の農林部会長を務めていた2016年当時から農業界の既得権益や慣習に切り込む農業改革に着手しましたが、長年の慣習を打破するのは容易ではなかったようです。
この記事では小泉進次郎が自民党農林部会長時代に行った農政改革についてまとめてみました。
安倍総理の肝入れで農林部会長に就任

農業畑において、全くの素人だった小泉進次郎氏を農林部会長に抜擢したのは、当時「アベノミクス」と名付けた成長戦略を推し進めていた安倍総理大臣でした。
成長戦略の三本柱の一つであった農政改革は「農政トライアングル」と呼ばれる利権構造にメスをいれることが不可欠でしたが、大きな票田を持つ農業団体であるJA(農協)の影響力は無視できず、改革を阻んでいました。
そこで安倍総理は、JAとなんのしがらみのなく、発信力もある小泉氏に白羽の矢を当て、農政改革を一気に推し進めようとしたのです。
なんといっても、自民党が昔からのやり方を改善できない唯一の理由は、「農政トライアングル」と呼ばれる
- 農林水産省(農水省)
- 自由民主党(自民党)
- 農業協同組合(農協=JA)
の強固な利害関係が崩せないからです。

農協は、大きな組織票を持つため、自民党は農協の意向を無視できません。
農業資材価格の是正とJA全農改革


小泉氏がまず着手したのは、JA(農協)グループの資材調達・流通のシステム改革です。




小泉進次郎議員は、農家が購入する肥料・農薬・農機具・飼料などの資材価格が海外と比べて極めて高いことを問題視し、慣行にメスを入れました。
JA全農(全国農業協同組合連合会)が資材の調達から販売までをほぼ独占している状況を見直し、資材購買部門の縮小や新組織への転換など、抜本的な改革を推進しました。


実際に、JA全農からの資材調達をやめた地域農協では資材価格が3割安くなった例もあり、農家の負担軽減を目指しました。
減反政策とコメ政策の見直し


コメの生産調整(減反)政策に対し、「作るなという農政」から「意欲ある農家には増産・輸出を促す農政」へ転換する姿勢を明確にしました。
自民党は、1970年代から減反政策を行ってきました。
そこには
- アメリカからの小麦粉輸入の強要
- パン食人気の高まりによる、米消費の低下
- 米が飽和し、価格の下落による農家の倒産
など、多くの課題があったためです。
確かに減反政策は、日本の米米価維持に大きな効力を発揮しましたが、2013年には冷夏による米不足が社会問題となりました。



備蓄米23万トン全て放出しても200万トンの不足でした
急遽、アメリカやタイなど、外国の米が輸入されましたが、世間では日本米のクオリティの高さを再認識することになりました。
自民党内では、昔からのやり方を見直す動きが出てきました。
海外での日本米や日本酒の人気の高まりも後押ししたと言っていいでしょう。
JAの民営化案


小泉氏は、JAが共済保険や金融業に大きく傾き、本来の農業支援から大きく逸脱していると主張。
農協の株式会社化を打ち出しました。
これには農協や農林部会内からも反発の声が
「日本の農業が外資に乗っ取られる」と世論も大きく反発しています。
JAの株式会社化って、日本農業の崩壊!
— 熊野 古道 (@ku_kai_koubou) May 26, 2025
大規模農家だけでは食は守れない!
小規模農家にはJAが必要!
JAは協同組合として原点回帰すべき!
政策決定と党内調整


小泉氏は党内の農林族やJAグループの強い反発を受け、JA全農の株式会社化や銀行部門改革などは見送り、農協側の自主改革を待つ内容に調整しました。



「骨抜き改革だった」と言われた所以です。
しかし、JA全農の資材購買・農産物販売事業の見直し、数値目標の設定・公表、農水省による定期点検などを取り付けたことは昔のやり方から大きく前進したと言っていいでしょう。
まとめ
小泉進次郎氏の部会長時代の農業改革は、
- 農協の独占的慣行の是正
- 資材価格の引き下げ
- 減反政策の見直し
- 消費者重視の政策転換
など、日本農業界の構造改革に大きな一石を投じました。
改革の一部は「骨抜き」となったと揶揄されましたが、「消費者目線」「組織・団体に忖度しない判断」を重視し、農協や業界団体よりも個々の農家や消費者に寄り添う姿勢を強く打ち出しました。
改革推進の過程で多くの軋轢や調整が生じたものの、農業界の「タブー」に切り込んだ点が高く評価されたと言っていいでしょう。
農水大臣に就任された今、さらなる改革に期待が集まっています。
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